会員の皆さまへ
今回の分析から、地域の魅力を知ってもらうことに加え、実際の訪問や周遊、地域での消費につなげるための情報発信や仕組みづくりが重要であることが見えてきました。
これらの傾向は、観光施設だけでなく、飲食店、宿泊施設、体験事業者、物販店など、地域のさまざまな事業者の皆さまにとっても、今後の事業を考えるうえでの参考情報となります。
例えば、旅行前の情報発信を充実させること、周辺の観光スポットと連携して訪問先を提案すること、地域ならではの商品や体験を磨くことなど、それぞれの事業に応じた活用が考えられます。
麒麟のまち観光局では、今後も観光データの分析・共有を通じて、地域の皆さまとともに、観光客の周遊・滞在・消費の拡大に取り組んでいきます。
本データを、皆さまの情報発信や商品・サービスの企画、地域内での連携を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。
全体総括
本事業は、「周遊促進」「消費喚起」「関係人口の創出」の3点において一定の成果を創出した。
特に
・圏域外からの来訪比率の高さ(約8割)
・スタンプラリーを起点とした周遊行動の創出
・クーポン利用による消費誘発
が確認され、観光DX施策として有効に機能していることが実証された。
一方で、認知不足・交通課題・情報導線の弱さにより、本来取り込める需要の一部を取りこぼしている状況であり、今後の重点課題である。
項目別分析
- 1. 属性
| 現状 | ・圏域外在住者が約8割と高い
・50代中心(キャンペーンにより40〜60代が主軸) |
| 経年 | ・登録者数は大幅増加(約2.8万人規模)
・アクティビティ・体験志向が増加 |
| 成果 | ・広域からの誘客に成功
・ターゲット層が明確化 |
| 課題 | ・若年層の取り込みが弱い |
- 2. 旅行決定時期
| 現状 | ・キャンペーンが「後押し」になっているが、元々来訪予定層も一定数存在 |
| 成果 | ・来訪の“決定要因”というより“後押し”として機能 |
| 課題 | ・事前段階(旅マエ)での影響力は限定的 |
- 3. 情報源(旅マエ/旅ナカ)
| 現状 | ・WEB/SNSが主軸
・現地で初めて認知するケースも多い |
| 成果 | ・SNS・WEB施策は一定効果あり |
| 課題 | ・「現地で初めて知る」=機会損失 ⇒ 旅マエでの情報接触機会の拡大が必要 |
- 4. 目的
| 現状 | ・観光+体験+グルメが中心
・スタンプラリーが動機付けに寄与 |
| 成果 | ・新規スポット訪問のきっかけ創出 |
| 課題 | ・目的の多様化(ナイト・体験など)が不足 |
- 5. 訪問先
| 現状 | ・砂丘に加え、周辺地域への分散あり |
| 成果 | ・周遊促進の効果あり |
| 課題 | ・依然として「砂丘依存」傾向 |
- 6. 日数
| 現状 | ・日帰り〜1泊が中心
・一部で2泊以上も確認 |
| 成果 | ・宿泊キャンペーンで延泊効果あり |
| 課題 | ・長期滞在化には未達 |
- 7. 消費
| 現状 | ・クーポン利用により消費発生
・想定以上の支出も一部あり |
| 成果 | ・消費喚起に明確な効果
・店舗との接点創出 |
| 課題 | ・消費単価の底上げ余地あり ⇒ 高付加価値コンテンツの不足 |
- 8. 興味・期待
| 現状 | ・自然・食・体験への期待が高い |
| 成果 | ・地域資源の評価は高い |
| 課題 | ・「知られていない」ことが最大の課題 |
- 9. 満足度
| 現状 | ・満足度は総じて高い |
| 成果 | ・リピート意向に直結 |
| 課題 | ・一部で交通・情報面の不満あり |
- 10. 認知
| 現状 | ・キャンペーン認知は限定的 |
| 課題 | ・「知られていない施策」が多い ⇒ 最大のボトルネック(最優先課題) |
- 11. 再訪意思
| 現状 | ・再訪意欲は非常に高い |
| 成果 | ・「また来たい」は多数 |
| 課題 | ・実際の再訪につなげる仕組み不足 |
重点テーマ別総括
- 1. 周遊の観点
| 成果 | ・スタンプラリーにより「普段行かない場所への訪問」を多数創出
・エリア横断の移動が発生 |
| 課題 | ・車依存(公共交通の弱さ)
・回遊しきれない(情報・時間不足) |
| 今後 | ・モデルコース強化
・交通×観光の一体設計 ⇒ 周遊は創出できているため、“回りやすさ”の改善フェーズへ移行 |
- 2. 消費拡大の視点
| 成果 | ・クーポンが消費の直接トリガー
・予定外消費(+α)が発生 |
| 課題 | ・単価向上施策が弱い
・消費の“質”の分析不足 |
| 今後 | ・高付加価値体験
・ナイトコンテンツ ・連泊促進 ⇒ 消費は発生しており、“単価向上・質の向上”が次の段階 |
- 3. 訪問者(参加者)の成果
| 成果 | ・新規スポット発見
・地域との接点(人との交流) ・満足度・再訪意向の向上 |
| 課題 | ・情報不足による機会損失
・期待と実体験のギャップ(交通・導線) |
| 今後 | ・UX設計(旅マエ〜旅ナカ〜旅アト)強化
・デジタル導線の最適化 ⇒ 満足度は高く、“再訪につなげる仕組み構築”が重要 |
まとめ(提案)
今後の方向性としては、以下の3点を重点施策とする。
- 認知の拡大(旅マエ強化)
- 周遊の質向上(交通・導線)
- 消費の高度化(高付加価値化・滞在時間延長)
本事業は、すでに「人を呼び、周遊させ、消費を生む基盤」までは構築できている段階にある。
今後は、これらを拡大・高度化するフェーズへ移行することで、地域経済への波及効果をさらに高めていく。
補足
1. このデータについて
一般社団法人 麒麟のまち観光局では、鳥取県東部と兵庫県北部にまたがる「麒麟のまち」圏域において、観光DXを活用した周遊促進、消費喚起、関係人口の創出に取り組んでいます。
本ページでは、観光DX事業「このへん共和国」の取り組みを通じて得られたデータを整理・分析し、来訪者の特徴や旅行行動、地域資源への関心、消費行動などについてご紹介します。
観光客がどのような情報を求め、どのように地域を巡り、何に魅力を感じているのか。こうした傾向を把握することは、今後の観光施策の改善だけでなく、地域の観光事業者の皆さまが商品・サービスの開発や情報発信を検討するうえでも重要な手がかりとなります。
本データを、地域全体で観光客の受入環境や周遊・消費の仕組みを考えるための参考情報としてご活用ください。
2. 観光DXとは
観光DXとは、デジタル技術やデータを活用し、観光客の利便性や旅行体験の向上と、観光地・観光事業者の持続的な成長を目指す取り組みです。
単にデジタルツールを導入することではなく、データから観光客のニーズや行動の傾向を把握し、情報発信、商品づくり、周遊促進、消費拡大などの施策に生かしていくことが重要です。
例えば、ウェブサイトやSNSを通じた情報発信、デジタルスタンプラリーによる周遊促進、クーポンによる消費喚起、会員データを活用した継続的な情報提供などが挙げられます。
「このへん共和国」では、こうしたデジタルの仕組みを活用し、観光客と地域との接点を増やすとともに、得られたデータを今後の観光施策の検討に役立てています。
3. 「このへん共和国」の事業概要
「このへん共和国」は、鳥取県東部と兵庫県北部の7市町を対象に、デジタルを活用して地域の魅力を発信し、圏域内の周遊や地域との継続的なつながりを促進する観光DX事業です。
対象エリア
- 鳥取県:鳥取市、岩美町、若桜町、智頭町、八頭町
- 兵庫県:香美町、新温泉町
主な取り組み
① 会員基盤の構築・情報発信
会員登録を通じて観光客との接点をつくり、地域の観光情報やキャンペーン、イベントなどの情報を届けています。
② デジタルスタンプラリーによる周遊促進
地域の観光スポットや施設を巡るきっかけをつくり、定番観光地だけでなく、これまで訪れる機会の少なかった場所への誘客を促進しています。
③ クーポンによる消費喚起
加盟店で利用できるクーポンなどを通じて、地域での買い物や飲食、サービス利用につなげています。
④ キャンペーンによる来訪・宿泊促進
テーマに応じたキャンペーンを実施し、来訪の動機づくりや、地域内での周遊・滞在の促進に取り組んでいます。
これらの取り組みを通じて、観光客の行動やニーズを把握し、より効果的な観光施策につなげることを目指しています。
4. データの見方・分析の目的
今回の総括では、事業を通じて把握できた来訪者の属性、旅行の決定時期、情報収集の方法、旅行目的、訪問先、滞在日数、消費、満足度、再訪意向などの観点から、取り組みの成果と今後の課題を整理しました。
主に、次の3つの視点で分析しています。
- 周遊促進: スタンプラリーなどが新たな訪問先やエリアを越えた移動につながっているか
- 消費喚起: クーポンなどが地域での消費や加盟店との接点づくりに寄与しているか
- 関係人口の創出: 地域への関心や満足度、再訪意向を高め、継続的な関係につなげられているか
なお、本分析は事業を通じて得られたデータに基づくものであり、地域を訪れるすべての観光客の傾向をそのまま示すものではありません。また、キャンペーン等による効果については、参加者の行動や回答から確認できた傾向を整理したものであり、施策単独の因果効果を示すものではありません。