会員の皆様へ
今回の分析から、会員登録の拡大に加え、登録者を実際の来訪や周遊、地域での消費につなげるための情報発信や仕組みづくりが重要であることが見えてきました。
これらの傾向は、観光施設だけでなく、飲食店、宿泊施設、体験事業者、物販店など、地域のさまざまな事業者の皆さまにとっても、今後の事業を考えるうえでの参考情報となります。
例えば、旅行前の情報発信を充実させること、周辺の観光スポットと連携して訪問先を提案すること、クーポンや特典を活用して来店のきっかけをつくること、地域ならではの商品や体験を磨くことなど、それぞれの事業に応じた活用が考えられます。
麒麟のまち観光局では、今後も観光データの分析・共有を通じて、地域の皆さまとともに、観光客の周遊・滞在・消費の拡大に取り組んでいきます。
本データを、皆さまの情報発信や商品・サービスの企画、地域内での連携を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。
全体総括
本事業は、「周遊促進」「消費喚起」「関係人口の創出」の3点において一定の成果を創出した。
2026年1月19日時点の国民登録数は26,425人(R7年度増加数+16,455人)となり、圏域外からの登録が82.4%を占めた。また、複数のキャンペーンを組み合わせることで、登録者の獲得に加え、周遊行動やクーポン利用を促進した。
特に、
・国民登録数の大幅な増加(26,425人)
・圏域外登録者の高い割合(82.4%)
・スタンプラリーによる周遊行動の創出
・宿泊キャンペーン等による来訪・消費の促進
・参加者アンケートを通じた地域資源の再発見や満足度の把握
が確認され、観光DX施策として一定の成果が見られた。
第3四半期(10~12月)は、宿泊キャンペーンの延長・第二弾やドライブ周遊キャンペーンの実施により、参加者数・クーポン利用数が再び伸長した。また、「ニッポンお城巡り」との連携による新規来訪者の獲得にもつながった。
一方で、キャンペーン間の連携による登録促進効果が見られる反面、個々の施策の認知や効果の把握、加盟店の活用促進、クーポン取得後の来店・消費への接続などに課題が残る。
今後は、登録者数の拡大に加え、来訪・周遊・消費・再訪へとつながる仕組みを強化し、地域経済への波及効果を高めていく必要がある。
項目別分析
【1. 国民登録・属性】
現状
・国民登録数は26,425人(2026年1月19日時点)
・R7年度増加数は16,455人
・圏域外登録者が82.4%、圏域内登録者が17.6%
・加盟店数は232店舗
成果
・圏域外からの登録が約8割を占め、広域的な登録者の獲得につながった
・複数キャンペーンの組み合わせが登録促進に寄与した可能性がある
課題
・登録者数の増加だけでは、実際の来訪や消費への転換を十分に把握できない
・圏域外登録者の初来訪・再訪状況や、登録後の行動を継続的に分析する必要がある
・圏域内住民の参加促進にも伸びしろがある
【2. 登録のきっかけ・キャンペーン設計】
現状
・アンケートキャンペーン、歴史周遊キャンペーン、宿泊キャンペーン、ドライブ周遊キャンペーンなどを複合的に展開
・複数のキャンペーンが重なる期間に登録者数が大きく伸長
・アンケートキャンペーン単体では登録増加数が限定的な傾向が見られる
成果
・複数の参加動機を組み合わせることで、登録者獲得の機会を拡大
・登録を入口として、周遊や宿泊など次の行動につなげる施策展開が進んだ
課題
・複数のキャンペーンが並行することで、登録のきっかけや各施策の寄与度が分かりにくい
・キャンペーンごとの新規登録者数や参加者の重複を把握し、効果検証を進める必要がある
【3. 圏域外登録者・来訪促進】
現状
・圏域外登録者が82.4%を占める
・圏域外登録者の来訪回数に関する参考データでは、2024年3月末から2025年12月末にかけて、初来訪の割合が13.4%から25.4%へ上昇
・一方、10回以上の来訪者の割合は42.4%から28.1%へ低下
成果
・新たな来訪者層の取り込みが進んでいる可能性がある
・既存のリピーターに加え、新規・ライト層との接点を広げる施策として機能している
課題
・圏域外登録者の増加が、実際の新規来訪者の増加にどの程度つながっているか、継続的な検証が必要
・初来訪者を再訪につなげる情報提供や特典設計が必要
【4. 加盟店・事業者参画】
現状
・加盟店数は232店舗
・歴史周遊キャンペーンの参加店舗数は多い一方、特典発行店舗数は43店舗にとどまる
成果
・地域内の多様な事業者が観光DX施策に参加する基盤を形成
・加盟店と来訪者の接点を創出する仕組みが構築されている
課題
・加盟店数に対し、特典発行など積極的な活用に至っていない店舗がある
・事業者によって参加・活用の温度差がある
・参加するメリットや活用方法を具体的に示し、事業者側の利用促進につなげる必要がある
【5. アンケートキャンペーン】
現状
・クーポン取得率は約98%
・クーポン使用率は約51%
成果
・参加者が利用しやすい入口施策として機能
・アンケートを通じて参加者の意見やニーズを収集する機会を創出
課題
・クーポン取得が来店・消費に直結していないケースがある
・取得後の利用を促す情報提供や、周遊キャンペーンとの連動が必要
・収集するアンケート項目について、今後の施策や商品造成にどう活用するかを明確にする必要がある
【6. 歴史周遊キャンペーン】
現状
・参加者数・スタンプ獲得数ともに堅調に推移
・3スポット、5スポット、10スポットと、段階的な特典達成が見られる
・参加者アンケートの回答数も増加
成果
・普段訪れない施設やエリアへの訪問を促進
・複数スポットを巡る動機付けとして機能
・周遊後のアンケートを通じて、体験内容や地域資源に対する評価を把握
課題
・参加者の訪問先や行動データを分析し、周遊の広がりや特定エリアへの偏りを把握する必要がある
・スタンプ獲得後の満足度や消費行動を、次の施策に生かす仕組みが必要
・アンケートで収集する情報の目的と活用方針を整理する必要がある
【7. 宿泊・ドライブ周遊キャンペーン】
現状
・第二弾鳥取市宿泊キャンペーンでは、クーポン取得数・使用数ともに伸長
・第三四半期はクーポンの実利用数が増加
・宿泊キャンペーンとドライブ周遊キャンペーンを組み合わせて展開
成果
・宿泊を伴う来訪や、地域内の周遊を促す施策として一定の成果が見られた
・複数キャンペーンの連動により、参加者の行動選択肢を拡大
課題
・宿泊キャンペーンによる宿泊数や延泊への具体的な効果を把握する必要がある
・宿泊施設から飲食店・観光施設への周遊や消費につなげる導線の強化が必要
・キャンペーンごとの利用実績を整理し、施策間の相乗効果を検証する必要がある
【8. 消費・クーポン利用】
現状
・アンケートキャンペーンのクーポン使用率は約51%
・宿泊キャンペーンではクーポン実利用数が伸長
・参加者アンケートでは、クーポンをきっかけに購入量を増やしたという声も見られる
成果
・クーポンが来店・購買の動機付けとして機能
・予定していた購入に加え、追加購入につながった事例が確認できる
・加盟店と参加者の接点を生み出している
課題
・クーポン利用による追加消費額や客単価への影響は、現状の情報だけでは十分に把握できない
・取得数・使用数に加え、利用金額や購入内容などの分析が必要
・特典の魅力向上と、地域内での消費拡大につながる仕組みづくりが必要
【9. 参加者満足度・地域資源の評価】
現状
・「初めて訪れた施設」「行ったことのなかったエリアに行けた」といった声が見られる
・施設や店舗スタッフの接遇を評価する意見が多い
・自然・食・体験など、地域資源に対する期待や評価が見られる
成果
・周遊による新たな発見や、地域の魅力の再認識につながっている
・地域の人との交流や接遇が、参加者の満足度を高める要素となっている
・圏域内住民からも地域の再発見につながったという声があり、住民の地域理解促進にも寄与している
課題
・参加者の声を継続的に分析し、施設・店舗のサービス改善や観光コンテンツの造成に活用する必要がある
・QRコードや地図など、デジタル面の操作性・分かりやすさに改善の余地がある
・利用者の年齢やデジタル習熟度にかかわらず、参加しやすい仕組みが必要
【10. 再訪・継続的な関係づくり】
現状
・「また来たい」「次回も参加したい」「毎年実施してほしい」といった声が見られる
・キャンペーンを通じて、地域との接点が生まれている
成果
・再訪意向や継続参加への期待が確認できる
・一度の来訪にとどまらず、継続的な関係づくりにつながる可能性がある
課題
・再訪意向を実際の再訪行動につなげる仕組みが必要
・登録後の継続的な情報発信や、次の来訪動機となるキャンペーンの設計が必要
・登録者数だけでなく、再訪率や継続参加率などを指標として検証する必要がある
重点テーマ別総括
【1. 周遊促進の観点】
成果
・歴史周遊キャンペーンを通じて、新たな施設やエリアへの訪問を創出
・スタンプ獲得数や特典達成状況から、複数スポットを巡る行動が確認できる
・参加者アンケートから、地域の再発見や新たな魅力への気づきが見られる
課題
・デジタル地図やQRコードの分かりやすさに改善の余地がある
・参加者の訪問先や移動状況を分析し、周遊の広がりを把握する必要がある
今後
・周遊モデルコースやエリア別のおすすめ情報の充実
・スタンプ取得から周辺施設への訪問につながる情報導線の整備
・参加データを活用した回遊状況の分析と、キャンペーン設計への反映
⇒ 周遊のきっかけは創出できているため、今後は「回りやすさ」と「周遊の質」の向上を目指す。
【2. 消費拡大の視点】
成果
・クーポンが来店・購買の動機付けとして機能
・宿泊キャンペーンではクーポンの実利用数が増加
・参加者アンケートから、クーポンによる追加購入につながった事例が確認できる
課題
・クーポン取得後の利用促進
・追加消費額や客単価など、経済効果の把握
・加盟店による特典発行やキャンペーン活用の促進
今後
・来店や購買につながるクーポン設計の見直し
・宿泊・飲食・観光施設を横断した消費導線の構築
・利用実績や消費データに基づく効果検証
⇒ 消費を促す仕組みは機能しているため、今後は「利用率の向上」と「消費効果の可視化」を進める。
【3. 登録者・参加者の成果】
成果
・国民登録数26,425人、R7年度増加数16,455人を達成
・圏域外登録者が82.4%を占め、広域的な登録者の獲得につながった
・新たな施設や地域の発見、人との交流、再訪意向などが参加者の声から確認できる
課題
・登録者数の増加と実際の来訪・消費との関係の把握
・初来訪者やライト層をリピーターにつなげる仕組み
・登録後の継続的な情報提供と参加促進
今後
・登録者の属性・行動データの分析
・参加履歴や興味関心に応じた情報発信
・来訪後のフォローアップや次回参加につながる施策の展開
⇒ 登録者との接点は拡大しているため、今後は「登録者の行動促進」と「継続的な関係づくり」を強化する。
【4. 事業者参画・地域連携の観点】
成果
・232店舗が加盟する観光DXの基盤を形成
・キャンペーンを通じて、参加者と地域の店舗・施設との接点を創出
課題
・加盟店数に対して特典発行店舗数が限定的
・事業者によってキャンペーンの活用状況に差がある
・事業者側のメリットや効果が十分に可視化されていない
今後
・加盟店向けの活用事例や利用実績の共有
・特典設計や情報発信の支援
・事業者の参加目的や課題を把握したうえでの運用改善
⇒ 加盟店の量的な拡大に加え、既存加盟店の活用促進と、地域全体での観光DXへの理解を深める段階へ移行する。
まとめ(提案)
今後の方向性としては、以下の3点を重点施策とする。
1.登録者の行動促進
登録者数の拡大に加え、来訪・周遊・消費・再訪への転換状況を把握し、継続的な関係づくりにつなげる。
2.周遊・消費の質の向上
キャンペーン間の連携を強化し、地域内の回遊やクーポン利用を促進するとともに、利用実績や消費データを活用した効果検証を進める。
3.加盟店の活用促進とデータ活用
事業者の参加メリットを明確化し、特典発行やキャンペーン活用を促進する。また、参加者データやアンケート結果を分析し、次年度の施策や商品造成に反映する。
本事業は、国民登録数の拡大と、周遊・消費を促す仕組みの構築において一定の成果を上げている。
今後は、登録者数やキャンペーン参加者数といった量的な成果に加え、実際の来訪・消費・再訪への転換を検証し、加盟店の活用促進と合わせて施策の質を高めていくことで、地域経済への波及効果と継続的な関係人口の創出を目指す。
補足
1. このデータについて
一般社団法人 麒麟のまち観光局では、鳥取県東部と兵庫県北部にまたがる「麒麟のまち」圏域において、観光DXを活用した周遊促進、消費喚起、関係人口の創出に取り組んでいます。
本ページでは、観光DX事業「このへん共和国」の取り組みを通じて得られたデータを整理・分析し、会員登録の状況やキャンペーンへの参加、来訪・周遊・消費行動、参加者の満足度などについてご紹介します。
こうしたデータから観光客の行動やニーズの傾向を把握することは、今後の観光施策の改善だけでなく、地域の観光事業者の皆さまが商品・サービスの開発や情報発信、集客方法を検討するうえでも重要な手がかりとなります。
本データを、地域全体で観光客の受入環境や周遊・消費の仕組みを考えるための参考情報としてご活用ください。
2. 観光DXとは
観光DXとは、デジタル技術やデータを活用し、観光客の利便性や旅行体験の向上と、観光地・観光事業者の持続的な成長を目指す取り組みです。
単にデジタルツールを導入することではなく、データから観光客のニーズや行動の傾向を把握し、情報発信、商品づくり、周遊促進、消費拡大などの施策に生かしていくことが重要です。
「このへん共和国」では、会員基盤の構築、デジタルスタンプラリー、クーポン、各種キャンペーンなどを通じて、観光客と地域との接点をつくり、来訪・周遊・消費を促進するとともに、得られたデータを今後の観光施策の検討に役立てています。
3. 「このへん共和国」の事業概要
「このへん共和国」は、鳥取県東部と兵庫県北部の7市町を対象に、デジタルを活用して地域の魅力を発信し、圏域内の周遊や地域との継続的なつながりを促進する観光DX事業です。
対象エリア
- 鳥取県:鳥取市、岩美町、若桜町、智頭町、八頭町
- 兵庫県:香美町、新温泉町
主な取り組み
① 会員基盤の構築・情報発信
会員登録を通じて観光客との接点をつくり、地域の観光情報やキャンペーン、イベントなどの情報を届けています。
② デジタルスタンプラリーによる周遊促進
歴史や文化などの地域資源をテーマに、複数の観光スポットや施設を巡るきっかけをつくり、圏域内の周遊を促進しています。
③ クーポンによる消費喚起
加盟店で利用できるクーポンなどを通じて、地域での買い物や飲食、サービス利用につなげています。
④ キャンペーンによる来訪・宿泊促進
アンケートキャンペーン、宿泊キャンペーン、ドライブ周遊キャンペーンなど、複数の施策を組み合わせ、登録者の獲得から来訪・周遊・消費へとつながる取り組みを進めています。
これらの取り組みを通じて、観光客の行動やニーズを把握し、より効果的な観光施策につなげることを目指しています。
4. データの見方・分析の目的
今回の総括では、事業を通じて把握できた来訪者の属性、旅行の決定時期、情報収集の方法、旅行目的、訪問先、滞在日数、消費、満足度、再訪意向などの観点から、取り組みの成果と今後の課題を整理しました。
主に、次の3つの視点で分析しています。
- 周遊促進: スタンプラリーなどが新たな訪問先や複数スポットを巡る行動につながっているか
- 消費喚起: クーポンなどが来店・購買の動機付けや加盟店との接点づくりに寄与しているか
- 関係人口の創出: 地域への関心や満足度、再訪意向を高め、継続的な関係につなげられているか
なお、本分析は事業を通じて得られたデータに基づくものであり、地域を訪れるすべての観光客の傾向をそのまま示すものではありません。また、キャンペーン等による効果については、参加者の行動や回答から確認できた傾向を整理したものであり、施策単独の因果効果を示すものではありません。